2014年秋田釣行


秋田 単独 ヤマメ 旅
2014年8月


ビジネスホテルの窓から見える外は雨だった。

今日は朝一で昨日の川に行こうと思っていた。

もろくもプランは崩壊した。

秋田遠征の最終日の朝。

遠征の最終日。一昨日はともかく、昨日の午前中は良い魚にようやく出会えたし、それほど焦ることもない。

けれど、大切な釣り旅の最後の日くらい、夏の空の下で釣りたかった。

最後まで雨具と一緒か。

もどって初日



秋田に着いて、まっすぐに有名河川に入った。

天気は曇りだが、晴れ間もでる、でも時たま雨が落ちてくる。


川は川霧が立ち込め、その先には熊でもいそうな感じだ。

その川では手のひらのようなヤマメしかいなかった。

あきらめて向かった次の川でも同じだった。

翌日の二日目。



世界遺産の山々から流れ出る川に行った。



ここでようやく、ヤマメらしい魚に出会えた。


もちろん尺には遠く及ばないが、せめて8寸レベルのサイズがほしかったから、ほっとした。






しかしその川も午後になると、通行止めになった道路の回復工事のせいか、濁りがでてだめになってしまった。


午後から転戦した川は二か所とも全くだめだった。







二日目の夜。




翌日のプランを考えた。



世界遺産の川では、もっと上流に良い場所がある。尺だっていそうな深い場所が無数にあるという情報を持っていた。


濁らなければ一日中そこにいてもいいくらいの良い川だったので、今日の午前中の濁りさえ取れればという期待があった。


まずはあそこにもう一度行こう。そしてダメなら帰りの時間までを考えたオプションの川を選ぼう。


オプションの川は、遠征前にいくつか選んでいた。そのうちの2つに絞り込んだ。


1つはしっかり複数の情報から得ていたが、もう一つはそれほどの情報量はなかった。最後の最後のオプションでもあったので、それほど真剣味がなかった。


けれど、それも使わないといけないかもしれない。もっとインターネットで調べる必要があったが、二日間の釣りと雨に濡れたこともあって、疲労感がどっと押し寄せてきた。


淡い期待とともに睡魔に襲われた。朝5時に出発できるよう、目覚ましのセットを4時に合わせた。


最終日の朝






外は暗いが目覚ましがなる。

重たい身体を持ち上げ、外を見る

外の雨は、その淡い期待を打ち消しそうだった。

でも昨日よい魚に会えていることもあり、「行ってだめなら仕方がない」それでも出発は6時になってしまった。




空は断続的に雨が振ったりやんだり。


途中強くなったりもしたが、下流部の濁りは昨日より薄く見えた。


昨日の場所から入渓。


川は増水していたが、釣りのできないほどではない。


しかしここでホテルにキャップと老眼鏡を忘れてきてしまったことに気が付いた。


雨具のフードをかぶれば問題ないが、そのままにしておくことはできない。もどらなければ。


戻ることは時間のロスにつながるがやむを得ない。フードをかぶって川に降りた。

フライを流すと手のひらヤマメがライズするが、今日は#12なので食いきれない。

でかいのだけ釣りたいのだ。



昨日に用心深くヤマメが出た流れは増水してスイートスポットが変化して何もなかった。


途中に雨が振ってきて濁りも濃くなった。


引き返すしかなかった。



車に戻ると雨はかなり強く降ってきた。


さんざん考えた挙句、キャップを取りにホテルに戻り、最終オプションの川に行くしかなくなった。時間が惜しい。


ウェダーのまま、ホテルに行くわけにもいかず、着替えた。この時間も惜しい。


車を飛ばし、フロントで確保してもらったキャップを奪うように受け取って車に戻ったときは10時を過ぎていた。


帰りの時間を考えると、最後のオプションの川でも2時には上がらないと無理と思えた。しかも距離感がつかめていないから、それだって不安がある。



そして最後のオプションの川は、事前に準備していた2万5000の一地図で、他の河川と重なっていなかったので、よく見ていなかった。



車の中で、位置を確認し、一冊だけ持ち込んだ古い釣り場集の説明書きを読み返した。一夜漬けどころか、5分漬けくらいだ。

説明書きにあったバス停は見落としたが、次の橋で見えた川は奇跡的に濁りがなく、透き通って川底が見えていた。

川底が見えていたのは喜ばしいことだが、同時に浅いということでもあった。

浅いと大きいのがいない。

しかし、すでに残り時間は数時間ということもあり、また雨も止んでいたこのエリアで、40歳台最後の夏の川を楽しむ分にはいいだろう。

川の水も透明だし、小さなヤマメでも遊んでくれればいうことはない。

車を橋のたもとの沢グルミの木の下に止め、アブが寄らなくなったころを見計らって、外にでて準備をした。

川は初日の川のように綺麗な透明で、深い場所も一部あった。

遠征前に川の情報ばかりに時間を裂いて、フライが十分巻けなかったこともあり、最終日にはヨレヨレのフライと、わずかな未使用のフライしか残っていなかった。

テレストリアル系のフライは残り数個しかなく、残りの中には、フライ自体がよく見えないものも含まれていた。


そのうちの一つを結んで、一度大きく下流に向かい、釣りあがることにした。

透明で清廉な流れとは反対に魚は出なかった。少なくとも深いところではチビもライズしなかった。

次第に川は瀬になり、川幅全体でも膝程度の深さの流れが50mほど続くエリアになった。

川幅いっぱいに流れる川は、あくまで水はきれいで底が見える。深さも一定で、ポイントらしいポイントはない。

この二日間、魚のいる場所は落ち込みや、ヨレ、深みに限られていて、瀬からは出ていなかったので、この50mは期待できないなと感じていた。

しかし、以前、東北の釣り風景でこうした川幅いっぱいに流れる瀬を釣り人が川の真ん中を歩きながら、両岸をフライで攻め、釣りあげるというシーンを思い出した。


「東北って、こういう感じ?(笑)」と一人思い込んだ。


川の中心部に立つと、浅い割には流れが強い。その立ち位置で、両岸のめぼしい流れのラインにフライを落としていった。

チビが数匹、じゃれついた後に、それなりの手応えのある魚が出た。ウグイだった。がっかりした。

そうか、こんな田圃の中の流れじゃ、こいつがいても仕方がないか。

これで終わるのかな。そう思った。






次に手のひらのヤマメが出た。ウグイだけじゃないのでほっとしたが、こんな浅い場所には大きいのはいそうにない。

何投しただろうか、ほぼ惰性のように竹竿を降り、ビルバランにラインを収めたり、出したりしながら上がっていったとき。

最後のまともなピーコックパラシュートフライに小さなライズがあった。ライズは手のひらと同じだったが、そのあとの動きが全く違った。

気が動転した。

こんな浅瀬に大きいのがいるわけがない。魚を確認しようとしたが、動きが俊敏でかつ、透明度が高いのに、影も見えない。


自分では下流に誘導しているはずなのに、ロッドは瞬時に上流に向いていたりした


バレるなという気持ちと、早く魚を確認したかった。でかいウグイだったとしたら

魚はあきらかなローリングをした。



ヤマメだ!



それから、魚を確認したかったが、なかなか寄ってこない。それどころか、また下流にぶっ飛んでいく。


川の上から誰かが見ていたら、ボクの狼狽ぶりと、素人のようなロッド裁きに笑いがでたかもしれない。それほど引きづり回された。



二回目の寄せでようやくネットに入ったのは体高の高いヤマメ。もしかしたら9寸は行ったかなというものだった。







「こいつに会いたかったんだよ」

思わず独り言を言いながら、写真撮影できそうな浅瀬まで移動した。


ネット内に収まったのは尺はないが、十分に9寸はあるきれいなヤマメだった。確実に昨日のよりは大きい。

秋田の奇跡だ。

すべて初見の川で、案内の人にも頼らず、ネットと書籍(古本まで漁った)を手あたり次第あたり、地域一帯のほとんどのエリアをカバーする地形図を入手し、絞りに絞って選んだ川に行った。



そうして選んだ場所に行くだんになって雨が降った。おかげでアブも少なく気温も低めではあったのだが。


夏の通例となる渇水を想定していただけに、濁りや増水に対する対処は想定外だった。


それでも、こんなヤマメに出あえた。


しかし写真を撮るときになって、そばにデッカイ蛭がいたのには参った。ボクはこいつが苦手である。


防水スマホで何枚かと、コンデジで何枚かを撮って(同じショットからしか撮影しなかったのが後で気が付いて後悔した)すぐさまリリースした。



そのあと、数十メートル進んだが、もうもはや満腹であって、ちょうどフライも無くなっていたため、秋田遠征の終了とした。

帰ってから数日経って、思い出す風景は二日目のヤマメがリリースしたあと、ちょっと振り返ってこちらを見たような仕草と、最終日のヤマメに引きづり回されたとき、ラインが水に突き刺さった景色である。


この思い出だけで、十分に美味しい酒が飲めている今日この頃である。


END