Fishing Odyssey 2010


サケが遡る大地の川で
2010年6月

サケ・マス資源管理センターはまだ朝早くてゲートが閉まっている。林道から見た川幅は、標準的なフライロッドが一本と半分くらいしかない。私たちは、かなり不安な気分を隠すように、テキパキと身支度を始めた。昨日の激しい雨は上流部にある濃密なヒグマたちのアジトに吸い込まれたようで、水を厚くするようなことはなかった。上がっていくが、深みがあまりにも少なかった。木々たちのトンネルを抜けると昨日の土砂降りがウソのように雲が、素早く青空のスキマを作っていく。同行者との待ち合わせ時間まではあとわずかと思われた時に前に現れた深みで、一匹の小さなヤマメが微かな手応えを残していった。天を仰いで、半ば投げやりにキャストすると、オレンジ色のラインが再び生気を宿した。北の大地の初ヤマメ。そのヤマメは、その大きさに不釣り合いなほどの充実感を私の心に残して、冷たくて生きる力を宿すような流れに戻っていった。